学校伝染病の管理と指導


 伝染病は近年医学の進歩とともに減少する傾向にあり,ウイルス性疾患をはじめとする学校伝染病も時代とともに変化している.学校内における伝染病の発生と流行について,学校医は十分な監視と対応が必要で,学校内流行を防止するための活動が求められる.

 学校医は学校伝染病の予防に関し必要な指導と助言を行い,学校における伝染病や食中毒の予防処置に従事することになっている.また,伝染病予防のため出席停止や臨時休業を実施する時にも学校医の指導・助言が重要な役割を演じるが,その際には医学的な判断とともに教育的な配慮が必要である.

学校伝染病の分類

 学校保健法施行規則により,いわゆる学校伝染病は3類に分類されている(表1)鵙.第1類は法定伝染病11種であり,その管理は伝染病予防法が優先し,隔離入院のもとに治療するもので,退院の基準も定められている.

 第2類は学齢期の集団に繰返し多発する,法定伝染病以外の主要な伝染病である.第1類とともに,その伝染病患者だけでなく,その疑いのあるもの,あるいは患者と同居しているもの,さらに伝染病発生地域からの通学者や伝染病の流行地を旅行したものについても,校長は学校医の意見を聞いて適当な期間出席停止の措置をとることができる.

 第3類は幼児や児童・生徒の集団生活への伝染・伝播を警戒すべき第1・2類以外の各種伝染病であり,結核,流行性角結膜炎,急性出血性結膜炎,その他の伝染病となっている.「その他の伝染病」 としては,ヘルパンギーナ,手足口病,伝染性紅斑,溶連菌感染症,突発性発疹,乳児嘔吐下痢症,伝染性膿痂疹,異型肺炎,感染性胃腸炎などがあげられる.

学校伝染病への対応

 伝染病の成立要因には伝染源,伝染経路,感受性者の3要因があげられ,学校伝染病においても,この3要因に対する防疫対策が,そのままその予防対策の基本となる.

1.患者と流行の早期発見

 学校医は感染症サーベイランス情報や自己の診療での観察から,現在流行中の伝染病,あるいは流行の恐れのある伝染病を想定し,その伝染病の概要,初期症状や予防についての知識を養護教諭を通じて児童・生徒や学校教職員に周知させておく必要がある.また家庭への連絡も忘れてはならない.いずれも日頃の健康教育の重要性が問われるところである.

 学校教職員は毎朝児童生徒の健康観察を行い,その健康状態の変化を直ちに養護教諭に報告する.さらに伝染病の疑いのあるものについては家庭に知らせて家庭医に受診させる.欠席者が多い場合には学校から家庭に連絡し,それが同一の疾患によるものか否かを確かめ,養護教諭から学校医に報告する必要がある.

2.出席停止

 学校保健法により,学校伝染病が発生した場合は,校長が学校医の意見を聞いて出席停止の措置をとる.校長は伝染病に罹患しているか,その疑いのあるもの,または罹患の恐れのある児童・生徒や幼児の出席を停止させることができる.出席停止の期間は学校保健法施行規則に示されている(表1)鵙.この出席停止は伝染源の除去を目的としているが,各個人の健康管理上の意義を併せもっている.

 第1類は前述のように伝染病予防法が優先しているので,学校保健法にはその出席停止に関する規定はない.

 猩紅熱は法定伝染病であり診断が確定すれば伝染病院に隔離されるが,近年は症状が軽い例が多く,治療しやすい疾患になったこともあり,学校保健の現場では後述の第3類の溶連菌感染症として取扱い,自宅で治療する場合が多い.

 第2類は学校保健法施行規則に出席停止期間の基準が規定されている.

 (1) インフルエンザ:(インフルエンザ鵐の項参照)

 (2) 百日咳:患者からの排菌は病初期から4週の間で,特有の咳が出現する以前のカタル期に感染力が強い.隔離は重要であるが感染防止効果は大きくない.エリスロマイシン鵑投与により数日で菌陰性となるが,10日以内の投与では再排菌することもある.鼻咽腔からの菌消滅が目標である.

 (3) 麻疹:麻疹ウイルス排出期間は発熱期間とは関係なく,発疹出現前4日目から発疹出現後3日以内とされるが,むしろ発疹出現前のカタル期に感染力が強い.合併症があると経過が長引くので,患者の回復状態を考慮すれば解熱後3日という出席停止の期間は妥当と思われる.麻疹罹患後の1か月位は細胞免疫の低下が認められるので,麻疹後の予防接種は1か月の猶予期間が必要とされる.

 (4) ポリオ(急性灰白髄炎):ポリオワクチンの普及により,わが国では事実上みられなくなった.潜伏期や不顕性感染者からもウイルスが排出されるので隔離の防疫効果は少ない.

 (5) ウイルス性肝炎:経口感染するA型肝炎や,血液を介して感染するB型肝炎,C型肝炎,およびE型肝炎がある.C型肝炎は輸血後肝炎の殆どを占め,感染後慢性化しやすいので重大な問題となっている.E型肝炎は中南米に定在しているが,わが国での存在は不明確とされる.

 A型肝炎ウイルスは潜伏期後半から発症初期にかけて糞便中に出現し,黄疸出現前後1週の間に感染するといわれる.隔離しても防疫効果は少ない.経口感染であるから手洗いを十分にし,貝類などの食品や飲料水に注意する.出席停止期間は主要症状が消退するまでとなっているが,主要症状が消退しても,かかりつけの医師の意見に従って出席時期を決めるべきであろう.

 B型肝炎では血液や分泌物の付いた体や衣服,シーツなどはなるべく早く石鹸を用い流水で洗い落とすことが必要である.タオル,櫛や歯ブラシなど血液の付きやすい日用品は自分専用にする.学校での鼻出血,外傷,皮膚炎などの手当はなるべく自分で行うよう指導し,養護教諭が治療に当る時はゴム,ビニールの手袋を用いる.唾液などが直接付着する検診用具の取扱いにも注意を要する.

 ウイルスは一般に乾燥に弱いので,血液や分泌物が付着したものは石鹸で十分に洗い,乾燥させることが必要で,保健教育やしつけの重要性が強調されるゆえんである.

 (6) 流行性耳下腺炎:ウイルス排出期間は耳下腺腫脹などの症状が出現する6〜7日以上前から,腫脹が消退するまで続く.臨床的には施行規則の規定どおり耳下腺腫脹が消失するまでを出席停止期間と考えてよい.

 (7) 風疹:ウイルス排出期は発疹出現前7日から出現後14日といわれるが,不顕性感染者も30%と多く,これも感染源になりうるので,発疹出現時のみの隔離だけでは感染防止は困難である.未罹患妊婦に対する注意も必要である.

 (8) 水痘:発疹出現前1〜4日から発疹出現後5〜6日が感染期間と考えられる.水疱からはウイルスが分離されるが,痂皮からの分離は困難であるので,出席停止期間を 「すべての発疹が痂皮化するまで」 と規定してあるのは妥当と思われる.

 (9) 咽頭結膜熱:起因アデノウイルスは患者の咽頭や眼脂から2週間,糞便からは3週間位検出される.不顕性感染者も多く,患者の隔離はあまり意味はないが,発症後3週間はプールを禁じるのがよい.

 第3類の学校伝染病の出席停止期間の基準はすべて「治癒するまで」 となっている.第3類のうちで病名が明記されていない「その他の伝染病」の取扱いについては地域や学校により出席停止の見解に相違があり,教育現場でしばしば混乱がみられる.特に伝染性紅斑や手足口病の取扱いは問題を起しやすい.こうした取扱いは各地域医師会で意志を統一し,混乱を避けることが強く望まれる.

 (1) 結核:(結核鵐の項を参照)

 (2) 流行性角結膜炎:主としてアデノウイルス8型による.眼脂中のウイルスによる直接・間接の接触感染の他,プールを介して感染する.感染力が極めて強く,第1〜2病週でもウイルス分離が可能である.病初1週間は特に厳重な管理が必要であり,患者のタオル,洗面具は他人のものを使用しないで手洗いを厳重にする.出席停止期間は2週間は必要であるが,プールは3〜4週間禁止する.

 (3) 急性出血性結膜炎:エンテロウイルス70型による.患者の眼脂による直接・間接の接触で感染する.伝染性は強く,結膜分泌物からのウイルス分離は第1〜2病日で40%であるが,第5病日には分離できなくなるので,発病後5日までを出席停止とする.

 (4) 伝染性紅斑:ヒトパルボウイルスB19による.飛沫感染の形成をとる.感染後1週間の潜伏期を経て発病し,発熱とかぜ症状を起す.4〜5日後にかぜ症状は消失し,その数日後に(感染後17〜18日)リンゴ病と称される紅斑が出現する.発疹期にはウイルスの排出はなく,感染性はないので発疹出現後の出席停止は無意味と考えられる.二次合併症として赤芽球の破壊による貧血が知られているが,主に特定の基礎疾患のある小児の場合にみられる.妊婦が本症に罹患すると流産の恐れがあり,妊娠中の母親や教師に対する配慮が要求される.

 (5) 手足口病:ウイルス排出期間は咽頭で1〜2週間,糞便で3〜5週間といわれる.コクサッキーウイルスA16型,10型,エンテロウイルス71型などによる.糞便中のウイルス排出期間が長く,潜伏期患者や不顕性感染者からのウイルス排出もあるので隔離の意義は少ない.飛沫,経口感染をする.プールは3〜5週間禁止し,特に幼稚園,保育園のビニールプールでの水遊びを禁じる.また手足に水疱のある間は鉄棒なども禁止する.

 伝染性紅斑と手足口病は「かぜ」の仲間として,学校伝染病の取扱いをする必要はないと考えられる.ちなみに,米国小児科学会でも出席停止としないように勧告している.

 (6) ヘルパンギーナ:主としてコクサッキーA群によって発病するが,かぜの一種で不顕性感染が多い.手足口病と同様隔離しても防疫効果は少ない.経口感染であり,発熱,咽頭症を訴えるが二次合併症として無菌性髄膜炎があげられる.発熱や発疹が強い期間は出席停止とする.

 (7) 異型肺炎:肺炎マイコプラズマは発病7日前から咽頭に証明される.飛沫感染であり,発病7日前から咳嗽のある時期に感染する.発症後6週でマイコプラズマは検出されなくなる.発疹や咳嗽の強い期間は出席を停止させる.

 (8) 溶連菌感染症:A群溶連菌によるもので,前述のように現状では猩紅熱の軽症例を溶連菌感染症として取扱うことが多い.2〜7日の潜伏期を経て発病するが,治療が不完全にならぬよう7〜10日間投薬する必要がある.

3.登校許可証明書

 学校保健法施行規則に出席停止期間の規定があるが,医師の裁量権も認めていて,第2類では「伝染病の予防上支障がないと認めた時」,第3類では 「適当と認める予防措置をした時,または病状により伝染の恐れがないと認めた時」はこの限りでないとしている.医師は必要に応じてこの規定を適用し,登校許可証明書を利用して不必要な長期の出席停止を避けるべきである.

4.臨時休業

 学校の設置者は伝染病予防上必要がある時は,臨時に学校の全部または一部の休業を行うことができる(学校保健法).いわゆる学校閉鎖,学級閉鎖である.臨時休業は学校内の感染流行防止を第一とするもので,時期の選定が重要な意味をもっている.休業の期間について法による具体的な規定はないが,インフルエンザは局長通達により最短4日間とされる.

 臨時休業を実施しても流行が止まないのは,児童・生徒が伝染病の診断をされる前に感染源になっているためである.潜伏期が長く,不顕性感染の多い伝染病の場合は,臨時休業の流行防止効果は少ない.しかし欠席が多い時に授業を強行しても教育効果はあがらず,欠席者がクラスの20%程度になった時は学級閉鎖が必要になると考えられる.

5.感受性者対策

 感受性者の数は流行予測のうえで重要である.学校の保健調査により児童・生徒の健康や生活状態を把握するだけでなく,既往症や予防接種歴を知り,感受性者数を把握できるようにしておく.中学2年生の風疹予防接種で感受性者を少なくしておくことは重要である.

平成11年4月1日より感染新法の施行により学校伝染病の取扱も大幅に変更になりました。更新工事中です。悪しからず。


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